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「方法発明」と「物の用途発明」の違いは? 審査段階~権利行使の場面を考える(第1回)

 例えば、公知の化合物Aについて、これをヒトが服用することによりヒトの頭痛を抑える効果を世界で初めて発見したとします。「化合物」それ自体は公知ですので、「化合物」それ自体の発明について特許出願をしても、新規性欠如として権利化することはできません。

 他方、「化合物Aの服用により頭痛を抑える方法」の発明は、発明として新規であり、頭痛を抑える効果が化合物Aに関する従来の知見から合理的に予測できなければ、進歩性も認められます。しかし、「化合物Aの服用により頭痛を抑える方法」は医療行為です。医療行為に該当する発明は、日本では、産業上の利用可能性を欠くとして拒絶されます。その理由として、医師の医療行為そのものに権利が及んで医療行為の円滑化が妨げられるおそれなどが指摘されています。

 では、化合物Aと頭痛抑制とを結びつけた技術的思想の権利化のための方策はというと、「物の用途発明」として権利化が可能です。例えば、「化合物Aを(有効成分として)含む頭痛薬」という物(化合物A)の用途(頭痛を抑制するために用いる製剤)発明として特定し、特許権を得ることができます。医師が「化合物Aを含む頭痛薬」を特許権者等から適法に入手すれば、「化合物Aを含む頭痛薬」の特許権は消尽します。したがって、「化合物Aを含む頭痛薬」を患者に処方するに当たり、「化合物Aを含む頭痛薬」に係る特許権侵害を気にする必要はない、ということになろうかと思います。

 このように、医薬を処方する行為に関し、方法発明として権利化できない状況下、その打開策として日本では医薬用途発明が認められる、と捉えることができます。医薬に準ずる機能性食品についても、長い議論を経て、今では同様の論理で食品用途発明が認められるようになっています。

 ここまでは比較的理解しやすいと思います。

(第2回に続く)