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「方法発明」と「物の用途発明」の違いは? 審査段階~権利行使の場面を考える(第2回)

 世界的には珍しく、日本では、医薬以外でも「物の用途発明」(公知の物に対して用途の違いのみで構成を区別化した物の発明)が広く認められています。医療行為に該当しなければ方法発明として権利化可能なのですが、このような技術についても当該方法を「物の用途発明」として特定することにより、日本では、物の用途の違いが先行技術との区別化要素として考慮され、権利化することができます(例えば、除草効果は知られていない公知の化合物Bを用いて除草する方法の発明を、「化合物Bを含む除草剤」として権利化できます)。そして、「物」の特許権は「方法」の特許権よりも侵害立証しやすいとか、効力範囲が広いとかいう一般論に基づき、方法発明として権利化可能な技術でも「物の用途発明」として権利化したいと考える方が多い印象を受けます。さて、実際はどうなのでしょうか。

 「物の用途発明」に係る特許権に基づき、当該物を製造ないし販売する第三者に権利行使する場合、当然、当該物が当該用途に用いられることを立証することが必要です。例えば、上記の「化合物Bを含む除草剤」に係る特許権侵害を問う場合、化合物Bが除草のために用いられていることを明らかにする必要があります。でも考えてみますと、化合物Bが除草のために用いられていることの立証は、「化合物Bを用いて除草する方法」を実施していることの立証と、事実上は同じと思われます。したがって、「化合物Bを含む除草剤」と「化合物Bを用いて除草する方法」の各特許権があった場合、両権利の侵害立証のハードルは大きくは変わらないように思います。違いは、除草剤そのものに対して、「化合物Bを含む除草剤」に係る特許権では直接侵害、「化合物Bを用いて除草する方法」に係る特許権では間接侵害が適用されるという形式的なものかと思います。しいて言えば、「化合物Bを含む除草剤」に係る特許権では、除草剤の、さらにその製造にのみ用いるものなどに対しても間接侵害を問うことができる一方、「化合物Bを用いて除草する方法」に係る特許権ではそこまでの効力は及ばない(間接侵害の間接侵害は問えない)、ということはあるかもしれません。

(第3回に続く)