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拒絶査定不服審判の勝算

 特許出願は審査請求により審査が開始され、審査官が拒絶理由を発見しなければ特許査定、拒絶理由を発見すると出願人に拒絶理由が通知されます。拒絶理由が妥当でなければ意見書により反論し、妥当な場合は審査対象の発明を減縮するなどして拒絶理由の解消に努めます。どのような応答が特許査定を得るのに効果的なのか、代理人弁理士と相談して対応するのが一般的かと思います。

 拒絶理由通知に応答しても拒絶理由が解消しなければ拒絶査定となります。拒絶査定に対して拒絶査定不服審判を請求することができます。しかし、出願人としては、拒絶査定となった出願について拒絶査定不服審判を請求しても、特許審決を勝ち取れる可能性がどの程度あるのか判断しきれず、また、費用面も考慮し、研究開発の貴重な成果物である発明の権利化をあきらめてしまうことも多いのかと思います。

 拒絶査定に至る前に、合理的に広い権利範囲で、かつ少ない応答回数でスピーディに特許査定を勝ち取り、顧客の事業に貢献し、かつ顧客の経済性にも貢献するのが弊所の基本スタンスです。他方で、特許査定が得られると思っていた出願でも、この感覚に反して拒絶査定になることが稀にあります。このような場合、拒絶査定謄本に記載された拒絶理由の説示を検討しますと、多くの場合、技術理解に(ちょっとした)誤解があったり、後知恵が入り込んでいたりして、拒絶理由の論理がしっくりこない部分があるものです。拒絶査定における拒絶理由の説示に多少なりとも違和感がある場合には、拒絶理由の論理の不備を精査・整理して反論を組み立てれば、実質的な減縮補正をしなくても、拒絶査定不服審判において高い確率で特許審決が得られます。自社事業への参入障壁の構築に役立つ可能性のある発明は、拒絶査定不服審判の請求を積極的に検討することをお勧めします。

 審査段階では、基本的には1人の担当審査官が審査します。これに対し、拒絶査定不服審判における審理は3人又は5人の審判官の合議体により行われます。そのため、拒絶査定不服審判では、より客観性のある公正な判断がなされると言われています。また、拒絶審決の後は知財高裁が管轄する訴訟が控えているため、拒絶査定不服審判では拒絶理由該当性の判断がより慎重に、より厳格になることもあるのでしょう。拒絶査定不服審判は、合理的に広い権利範囲を取得するための有効な手段であると実感しています。