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米国特許弁護士が来所されました。

 4月23日、米国の Birch, Stewart, Kolasch & Birch, LLP(略称:BSKB)より特許弁護士(Marc S. Weiner氏)をお招きして、一応の自明性(103条)の拒絶理由への対処について、内在特性(inherency)に係る問題を中心に、実務的な観点からレクチャーしていただきました。なお、内在特性は、通常は新規性(102条)の判断において問題となるものですが、今回は、自明性と内在特性との関係にフォーカスしてレクチャーしていただきました。

 その内容を簡単にご紹介します。

 

 先行技術に係るモノと区別するために、本件出願にかかるモノの発明を先行技術が記載していない物理的・化学的特性(例えば機械的物性)により特定し、先行技術に対する非自明性を主張することがあります。このような出願は、化学・材料系の発明において比較的多い傾向にあります。

 このような出願をした場合、上記の特性は先行技術に係るモノ(あるいは審査官が2つの先行技術を組み合わせて作り出したモノ)が必然的に有する特性であるとして、自明性に係る拒絶理由を受けることがあります。これは、同一組成のモノは、同一の特性を有すると認定されるためです(MPEP 2112.01)。

 このような拒絶理由が合理的な根拠(引例)を伴って通知されると、自明性に係る立証責任が出願人側に転換します。つまり、出願人が自明でないことを立証しなければなりません。

 このような状況において反論を試みる場合、まず、その内在特性が先行技術の教示から一義的に導かれるか否かを検討すべきとのことです。内在は、可能性では足りず、先行技術から必然的な結論として(necessarily)導かれる必要があるとのことです(先行技術がその内在特性を有する場合もあれば、有しない場合もあるというのでは足らず、必ずその内在特性を有することが必要)。

 上記反論においては、デクラレーション(Rule 1.132)により実験データを提出し、先行技術がその内在特性を有しない(場合がある)ことを示すのが有効とのことです。どのような実験データの提出が有効であるか、審査官と面接して事前に協議することも有効とのことでした。

 また、実験データの提出が難しい場合、エキスパート(発明者も可)によるオピニオンデクラレーションを提出することも有効とのことです。実験データほどの説得性はありませんが、その内容について、審査官は十分に考慮してくれるとのことです。

 なお、リマークス(意見書)によって反論をしても、審査官はその内容をあまり重要視しない傾向があるとのことです。