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パラメータ発明について

 特殊パラメータで限定した発明に限らず、最近では、機械的物性等の数値により限定した数値限定発明も含めて、広く「パラメータ発明」と呼ばれているようです。このような「パラメータ発明」は特許として数多く成立しています。従来技術と構成が共通しながらも、パラメータによる限定要件を付加し、当該パラメータの、従来知られていなかった技術的意義を実験事実(実施例)として具体的に示すことにより、特許権(独占排他権)を取得することが可能です。特に、限定事項と発明の効果との関係の予測が通常は困難とされる化学・材料分野において、パラメータ発明に係る特許権は、比較的高頻度で成立している印象を受けます。

 他方、このようなパラメータ発明の技術的範囲に、従来公知の物、すなわち、本来は何人も自由に製造・販売等することができる物(パブリックドメイン)が包含され得る問題が指摘されています。この問題を考慮し、審査においてパラメータ発明は、当該パラメータを内在(inherent)する蓋然性が高い先行技術に基づく新規性・進歩性欠如の拒絶理由が通知されたり、サポート要件等の視点からも比較的厳しく審査されたりしているのかと思います。しかし、新規性・進歩性の観点では、従来公知の物が当該パラメータに着目していない(当該パラメータの数値が不明である)ことが多く、それゆえ、出願人が一応の合理的な反論をすれば、新規性・進歩性を否定する具体的根拠を、審査官の側から繰り返し提示し難いのが現実なのかと思います。

 パラメータ発明に係る特許権の成立を比較的広く許容した上で、問題が生じた場合には当事者同士の解決に委ねるというのが、特許庁の現状のスタンスのようにも感じます。

 特許法の趣旨は、我が国の産業の発達にあります(特許法1条)。他方、ビジネスにおける特許権取得の目的は、自社の事業利益を増大させることにあります。特に後者の立場では、パラメータ発明(改良発明、選択発明)も積極的に出願し、他社参入障壁を高め、自社の競争力ないし優位性を持続的に高める特許網を構築することが避けらないように感じます。