コラム
「個の実力とチーム力で金」
2018年2月25日、日本中が熱狂した平昌オリンピックが閉幕した。日本は冬季最多である13のメダルを獲得した。その中でもチーム力が光ったのが女子団体追い抜き、パシュートである。今大会の決勝で彼女らが出したタイムは2分53秒89。五輪新記録で堂々の金メダルを獲得した。
日本はこの種目に、チームジャパン科学班の提案で「科学の力」を存分に投入した。「先頭の姿勢の高さに2番手が合わせると、2番手が受ける空気抵抗は単独滑走時に比べ50%減となることが判明。逆に、先頭より姿勢が高くなり、距離も開いてしまうと13%まで効果が減ってしまう」(読売新聞 ’18年2月22日、紙面より一部抜粋)ことが明らかとなったという。このデータを基に、先頭交代の方法からゴールの方法まで、実に科学的に分析され最良の戦略がとられた。「一糸乱れぬ滑りのチーム力」を科学の力で支えた勝利である。
もちろん個の力が重要であるのは間違いない。決勝で戦った高木美帆選手は女子1,000mと1,500mで、高木菜那選手も女子マススタートでそれぞれメダルを獲得している。しかし、メンバーにメダリストが揃っているのは決勝相手のオランダも同じ。1秒59差をつけてオランダに勝利できたのは個の力だけではないことは明白だ。
知的財産権を巡る「知のレース」は一般的なレースのように金、銀、銅があるわけではない。金メダルのみである。その唯一のメダルをかけて、企業、研究者、そして我々知的財産業務に携わる者が、日々切磋琢磨しレースに臨んでいる。我々もこの「知のレース」に、「個」としての技術力を高めつつ、チーム力を発揮しながらレースを続けている。